「マシン・ラブ展」がすごすぎる!テクノロジー×アートの最前線に出会う衝撃体験レポート

美術展レポート

まるで近未来に迷い込んだような…不思議で美しい空間体験ーーー

森美術館で開催中の《マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート》展は、AI、プログラミング、ゲーム、デザインといった最先端テクノロジーを駆使した、革新的な現代アートを紹介する展覧会です。

国内外から選ばれた12組のアーティストたちがテクノロジーを手に、人間の感情や、社会の課題に鋭く切り込む作品を制作。映像、サウンド、AI技術を駆使した展示が並び、私たちの感覚をあらゆる角度から揺さぶってきます。

今回、私はこの「マシン・ラブ展」に足を運び、その魅力をじっくり体感してきました!それはもう、衝撃の連続でした!

それでは、3時間以上滞在してもまだ足りないと感じた、この展覧会の見どころを3つに分けてご紹介します!

みどころ1:圧巻のスケール!巨大スクリーンで体感するデジタル空間

今回、全体を通して一番感じたのは、映像と音響が織りなす“非現実的な世界”への圧倒的な没入感です。

映像作品が沢山ありましたが、どれも、巨大スクリーンに映し出される高解像度の映像と、空間全体を包み込むようなサウンドが見事に融合して、本当に圧倒されます。目の前には現実を離れたもうひとつの世界が広がります!!

映像が展示される空間そのものも、壁や床に装飾が施されたインスタレーションになっていて、まさに作品の中に入り込んでしまったような感覚になります!非現実的でありながら不思議なリアリティも感じられて、現実と仮想の境界がだんだんと曖昧になっていくよう・・・

では、特に気になった作品を紹介!

【ルー・ヤン(陸揚)《独生独死―自我》】

作家自身をモデルにしたアバターが、仏教の世界観をベースにした幻想的な空間を旅していきます。仏教における「六道」(地獄や天上界など)をダンスで表現しているのですが、とてもかっこよかった!!

アートとして、メッセージ性もさることながら、「直感でかっこいい!」と思える美的感覚もとても大事だと思うので、そういった意味でもとても好きな作品でした!

舞台で繰り広げられるダンスショーのようでもありながら、デジタル表現ゆえに背景や衣装も現実を超越していて、夢の中に迷い込んだようでした!

タイトルの「独生独死」は、“人はひとりで生まれ、ひとりで死んでいく”という仏教の思想。作品全体を通して、生と死という人間の普遍的なテーマが、ポップな映像の中にも深く問いかけられていました。

【佐藤瞭太郎《アウトレット》】

目の前に広がるのは仮想空間のはずなのに、そこには、スーパーの店内や、ショッピングモールの駐車場、団地など、“ありふれた風景”があり、どこかで見たような感じに錯覚してしまいます。そこにゲームに登場しそうな兵士や少女、動物、ゾンビなどが次々と現れて、巨大スクリーンを埋め尽くしていきます。やがて彼らは無造作に放り出されていき、まるで消費された「キャラのゴミ」のようにも見えました。かと思えば、次の瞬間にはみんなでシュールなダンスを始めたりと、、、展開の意外性に目が離せません!

ゲームの中のキャラクターたちの“日常”を覗き見しているような、不思議な体験でした。見ているうちに、もしかしたら私たちのこの世界も、誰かに見られている仮想空間なのかもしれない…そんな錯覚に陥るようなゾクゾクする作品でした。

みどころ2:AIによって生成され続ける、生きているデジタルアート

AIの時代が到来しています。ビジネスや教育だけでなく、アートの世界でもその力が活用され、今までの常識を大きく塗り替えています。本展覧会でも、その最前線を体験することができました。

まず、入口にはAIによって出力された専門用語の解説が壁一面に展示されています。どんなプロンプトで生成されたのかまで明記されていたのが面白かったです。“AIと人間の共作”からのスタート!!

特に衝撃だったのは、AIによって常に生成され、リアルタイムで映像が変化し続ける作品です。クリエイターの手を離れたあとも、作品は「生きている」かのように変化を続け、その瞬間しか見られない景色を私たちに見せてくれます。何度でも観たくなる、不思議な魅力がありました。

【ビープル《ヒューマン・ワン》】

本展覧会の目玉作品ともいえるのがこちら。

メタバースに生まれた「最初の人間」が、絶え間なく変わるデジタル世界を歩き続ける姿が、4面のスクリーンに映し出されます。

2021年の発表以来、歩き続けている“その人”は、どこか疲れ果て、傷つきながらも進み続けている。背景は宇宙空間からアニメのような世界まで様々で、色彩も大きく変わり、見るたびに異なる印象を受けます。

これは、デジタル世界を旅する彼の姿を通して、私たち現代人の姿を投影しているのかもしれません。常に変化する社会に疲弊しながらも前進し続ける――そんな現代人の姿を重ねて見てしまいます。

【ヤコブ・クスク・ステンセン《エフェメラル・レイク》】

もう一つ心に残ったのが、ステンセン《エフェメラル・レイク》。自然現象に着目した作品で、自然の美しさがデジタルによって最大に引き出されていました。

湖、水中、大地、空、……その全てが圧倒的な映像美で描かれ魅了されます。

周期的に現れる「一時湖」からインスピレーションを得ており、実際に作家自身が採取した、写真や音声などが組み合わされ、そのデータを元にAI生成され続けています。二度と同じ瞬間が訪れない、一瞬一瞬が生きている作品が映し出されます。映像の周りにはガラスで作られた鍾乳洞のようなライトが吊るされていて、まるで地中に潜り込んだような没入感があるインスタレーションでした。

変わり続ける作品を前にすると、「今」という瞬間の貴重さや、自分自身のあり方についても考えさせられました。

みどころ3:アートは今も進化の途中。未来へ広がる可能性

展示全体から感じたのは、「現代アートは今もなお進化の過程にある」というワクワクするような感覚です。

常にその時代その時代の最先端があり、時を経るとまた世界は変わっていて、各時代を表す芸術へと、作品の存在が変容してきた歴史があります。何がアートで、何がアートでないのか・・・それも時代によって大きく違ってきました。

今回特に、ビデオゲームを用いた作品群は、これまでのアートの枠を大きく飛び越えていて、衝撃だったし、アートと向き合う際の新たな視点を与えてくれました。
ゲームという“遊び”と、アートの“哲学”が交じわることで、ある意味参加できるアートとして楽しめたし、鑑賞体験がより広がっていくのを感じました。

また、どんなにデジタル化しても、表現されていることは、とても人間的な作品が多く、いつの時代になっても変わらない感情や感覚があるということも再認識できました。何万年も前から、人間の感情を表現し続けてきたアートの世界。1万年前、1000年前、300年前それぞれの喜びの表現、100年前の悲しみの表現、10年前の愛や希望の表現・・・そして、まさに今の表現はここにあり。

21世紀初期という時代を全している私たちは、過去から未来へ向かう途中を歩いている。アートの進化もまだ“途中”——その“途中経過”を体感できる貴重な展覧会でした。

おわりに

今回は「マシン・ラブ展」の様子をレポートしましたが、実際に訪れるとここではとても書ききれないほどの感動と発見があります。体験してこそ感じる喜びが沢山あるでしょう。

会場は広々としていて、日曜日でも意外とゆったり鑑賞できる(4月現在)のも嬉しいポイント。映像作品が多く、内容も濃いので、時間に余裕を持って訪れるのがおすすめです。

「テクノロジー×アート」の世界は、きっとあなたの感性にも新しい刺激を与えてくれるはず。ぜひ、この驚きと感動を、実際に体験してみてください!!

展覧会基本情報

《マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート》

• 会期:2025年2月13日(木)〜 6月8日(日)

• 会場:森美術館(東京都港区 六本木ヒルズ森タワー53階)

• 開館時間:10:00~22:00(火曜のみ17:00まで)※最終入館は閉館の30分前

• 休館日:会期中無休

・料金:

【一般オンライン】 平日:1,800円 休日:2,000円

【一般当日】    平日:2,000円 休日:2,200円

【学生(高校・大学生)オンライン】 平日:1,300円 休日:1,400円

【学生(高校・大学生)当日】    平日:1,400円 休日:1,500円

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